Clap Log③

 片手で掴んだハンバーガーにかぶりつく。レタスの破片は床に落ち、溢れたソースが一滴、口の端を汚した。嘗めとると、照り焼きの甘じょっぱさがじわりと舌先に広がっていく。
 これは美味しい。間違いない、ただ。
 
「……魚食べてぇー」
 
 がっくりと頭を落として心の底から吐き出した。取り落とさないように両手で持ったバンズはほかほかでまだ温かい。美味しいんだ、これは。嫌いじゃない。項垂れた俺の様子に、同じようなメニューを食べているサイドキック達は笑った。すみませんね、情けなくて。
 
「ロクな食事しよらんもん、しゃーない」
 
 立て込んでいて、数日帰れていない。一番先におろそかになるのは食事だ。コンビニかシリアルバーか、テイクアウトのファーストフード。食べれているだけまだマシなのかもしれないが、色々なものが欠乏し始めている。主に、魚と野菜。次に睡眠。それからまだ、あと一つ。
 
「そろそろ現状打破と行きたいですね」
 
 きれいに平らげて、紙をくしゃくしゃに丸める。ゴミ箱に向かって投げると緩やかな放物線を描いて――見事に外した。
 
 ダっサ!
 
 再び項垂れて大袈裟なため息を吐くと、剛翼を一枚、助けに出した。ひらひら間抜けに浮かぶ羽根がゴミを運ぶのはなんともシュールだ。サイドキックに笑われたって構やしない。
 これだけ長い間会えていないのだから、調子の一つも狂ったって仕方ない。足りていないと、尚更欲しくなるのが人間ってモンじゃないか。ましてや、俺は強欲だ。
 
「今日のミッション、頑張らんと」
「望むとこです」
 
 軽口と共に叩かれた肩に、気合いを入れる。今日こそ任務完了して、彼女に会いに行く。
 
 足りない分は、補給しなきゃ。